極真の黒帯まで5年|昇段審査の内容と10人組手を経験者が書く

白い道着に黒帯を締める空手経験者のイメージ 大人から始める空手・キック

極真の黒帯を取るのに、実際どれくらいかかるのか。審査当日は何をやらされるのか。10人組手はどこまできついのか。

私は高3で極真に復帰し、白帯からやり直して、23歳のときに初段を取りました。復帰から約5年です。この記事では、そのときに自分がやったことを、公開されている支部の審査規定と並べて書きます。

この記事について
掲載している画像は、記事の内容を伝えるためのイメージイラストです。実際の人物や審査会を撮影したものではなく、型や技術の正解を示す図でもありません。
また、私には復帰前にも空手の経験があります。この約5年は、未経験者が初段になるまでの標準年数ではありません。受審までの期間は、所属先の規定と、稽古の頻度や習得の状況によって変わります。

先に結論

  • 初段の受審条件は支部ごとに違う。稽古回数・大会出場・合宿参加の縛りも、課題型も、公開されている規定で支部によって違います
  • 私の場合、白帯からやり直して初段まで約5年。年齢は23歳でした
  • 条件のうち意識して取りに行ったのは合宿だけ。稽古回数や試合出場は、続けているうちにいつの間にかクリアしていました
  • 審査当日の順番は体力審査・型・筆記が先で、10人組手が最後。落としそうになった種目はなく、きつかったのは組手だけです
  • 準備は半年前から。型を覚えることと、サンドバッグで1分ラッシュを20セット
  • 10人組手は、私は5人目くらいから記憶が曖昧です。最後まで行けたのは気持ちだけでした。ただし、どこできつくなるかは人によって違います
  • 頭痛、めまい、ふらつき、受け答えの異常、記憶の抜けが出たときは、その場で中止。ここだけは気持ちの問題ではありません

帯の色と級の全体像は空手の昇級審査と帯の色にまとめています。この記事は初段(黒帯)の審査だけに絞ります。

初段の受審条件は、支部によって違う

指導者と予定表を見ながら昇段審査の準備を相談する道場生
受審条件は支部ごとに違います。まず自分の道場の規定を確認するところからです。

まず知っておいてほしいのは、「極真の黒帯の条件」は一本の数字では言えない、ということです。同じ極真会館(IKO)でも、支部が公開している規定は内容が揃っていません。

公開されている3つの支部の資料を見ていきます。いずれも極真会館の支部のものです。

極真会館 千葉県南支部の審査規定

千葉県南支部は、帯ごとに数値まで公開しています。茶帯から黒帯(初段)の欄には、次のように書かれています。

  • 受審資格:稽古回数120回以上/試合出場2回/合宿参加2回
  • 体力テスト:拳立て100回、ジャンピングスクワット100回、逆立ち歩行1往復、棒跳び前後10回、ボール蹴り230cm(跳び後ろ廻し蹴り)
  • 組手:1分×10人連続(少年部・壮年部は50秒)
  • 型:平安の裏、突きの型、最破

稽古回数120回をどの期間で数えるのかは、このページには書かれていません。入門以来の累計なのか、前の審査からなのかは、所属先で確認する必要があります。

同じ規定では、緑帯から茶帯(2級・1級)が稽古100回以上・拳立て70回・組手50秒×5人連続(少年部は2人で、連続ではない)となっています。茶帯から黒帯で、数字が一段跳ね上がるのが見て取れます。

極真会館 埼玉東支部の審査内容

埼玉東支部は、回数ではなく条件と課題型で書いています。初段の受審資格と課題型、そしてページに掲載されている審査項目を整理します。

  • 受審資格:極真会館総本部会員制度に登録済みであること/支部主催の合宿に2回以上参加、あるいは各種大会に積極的に出場していること/規定の修行期間をクリアしていること
  • 初段の課題型:平安ⅠからⅤ裏、征遠鎮、臥竜、十八、転掌
  • 審査項目(ページ全体の共通項目として掲載):筆記試験、柔軟、補強、逆立ち、ブリッジ歩行、棒跳び、ボール蹴り、飛び後ろ回し蹴り、基本稽古、移動稽古、型、組手

組手の本数や時間の記載はありません。審査項目は初段の欄に固有のものではなく、ページ全体の説明として載っているものです。

極真会館 横浜港南支部の受審の手引き

横浜港南支部が公開している「昇級・昇段審査 受審の手引き」(2020年9月改訂)も確認しました。昇段審査についての記載はあります。

  • 審査会は年に4回開催(原則2月・5月・8月・11月)。そのうち5月・11月に昇段審査を実施
  • 「昇段チャレンジ365」として、1年間休まずに稽古に出席すると昇段審査の受審が許可される(中学生以上・2級以上が対象)

ただし、掲載されている基準一覧は2級までで、初段の詳細は揃っていません。そのため、この記事では初段の条件の比較には使っていません。

3つを並べて見えること

極真会館の3支部が公開している初段の受審条件の比較。千葉県南支部は稽古120回以上・試合2回かつ合宿2回・1分×10人連続、埼玉東支部は合宿2回あるいは大会出場で組手は審査項目にあるが時間や本数の記載なし、横浜港南支部は年4回のうち5月・11月に昇段審査
同じ極真会館でも、公開されている規定はこれだけ違います。「かつ」と「あるいは」の差にも注意してください。スマートフォンでは画像をタップすると拡大できます。

並べると分かりますが、千葉県南支部は「合宿2回かつ試合2回」、埼玉東支部は「合宿2回あるいは大会に積極的に出場」です。読み方が変わります。

課題型も揃っていません。千葉県南支部は平安の裏・突きの型・最破、埼玉東支部は平安ⅠからⅤ裏・征遠鎮・臥竜・十八・転掌です。「極真の初段の型」も、一つには決まりません。

所属道場で確認すること

受審を考えはじめたら、次の5つを道場で聞いておくと、あとで慌てません。

  • 稽古回数を数える期間、必要な級・年齢・修行期間
  • 試合・合宿の必要回数と、参加できない場合の扱い
  • 型、体力審査、筆記、組手の内容と時間、使用する防具
  • 申込締切と、審査料・登録料・帯代を含めた総額
  • 審査を中止する基準と、延期・再審査の条件

私が初段を受けたときの条件

私の道場の条件も、おおむね同じ枠組みでした。ただ、受ける側の実感としては、条件のうち意識して取りに行ったのは合宿だけです。

稽古回数も試合出場も、道場に通って大会に出ていれば、気づいたときにはクリアしていました。逆に合宿は、参加しようと思わないと参加しないものです。私が合宿に行くようになったのは、黒帯を取ると決めてからでした。

ここは、これから条件を埋める人には現実的な話だと思います。回数は通っていれば貯まります。合宿だけは、自分で予定を空けないと一生埋まりません。

合宿で実際に何をするのか、持ち物や1日の流れは空手の合宿は何をするのかにまとめました。

審査当日にやったこと

審査に向けて用意した道着と茶帯、筆記用具、タオル、水筒のイメージ
当日は体力審査・型・筆記が先で、10人組手が最後でした。

当日の順番は、体力審査・型・筆記が先で、10人組手が最後でした。

体力審査

拳立て、ジャンピングスクワット、逆立ち歩行、棒跳び、ボール蹴り。千葉県南支部の規定に並んでいるのと同じ系統の種目です。

正直に書くと、ここで落としそうになった種目はありません。ただしこれは私の場合で、茶帯までの稽古で準備ができていたからです。数字だけ見ると拳立て100回は重く見えますが、そこまでの級を通ってきた過程で身体はできていました。

この記事を読んで身構えるとしたら、体力審査ではなく組手のほうです。

私の支部の課題も、埼玉東支部が公開しているものと同じでした。平安の裏、征遠鎮、臥竜、十八、転掌。

当日苦労した記憶はありません。ただしそれは、準備でいちばん時間を使ったのが型だったからです。理由は次の章に書きます。

筆記試験

何を聞かれたかは、正直もう覚えていません。難しかった記憶もありません。

やったことは一つで、先に黒帯を取った人に話を聞いて予習したことです。同じ道場で先に受けた人がいるなら、聞くのがいちばん早いです。

10人組手のリアル

指導者が見守る道場で一対一の組手に向けて構える二人
相手は毎回入れ替わり、こちらだけが替わりません。

相手は誰が来るのか

私のときは、その日の審査会場にいた黒帯の指導者や選手が相手をしてくれました。自分の道場の人間だけではありません。他道場の人も混じります。体重差のある相手もいました。

1分×10人。相手は毎回入れ替わって、こちらだけが替わりません。ここが10人組手のいちばんきついところです。

5人目からのこと

正直に書きます。5人目くらいからしんどくて、そこから先はあまり覚えていません。

覚えているのは、お腹を効かされたことと、足も効かされたことです。そこから最後までは、気持ちだけで行きました。技を組み立てたとか、こう対処したとか、そういう記憶ではありません。

ただし、これは私の場合です。一人目からきつい人もいますし、稀ですが10人目でも元気な人もいます。何人目でどう来るかは、人によってまったく違います。ここを一般化して読まないでください。

私にとっては、10人組手は体力の審査ではありませんでした。体力は前半で尽きて、後半に残っていたのは、続けるかやめるかの判断だけです。

そのうえで、ここははっきり書いておきます。ここに書いたのは、今になって振り返った私の記憶です。当時の私の状態を、この記事から判断することはできません。稽古や審査の最中に頭痛、めまい、ふらつき、受け答えの異常、記憶の抜けが出たときは、気持ちで乗り切ろうとせず、その場で中止して医療機関に相談してください。脳振盪が疑われる場合、その日の組手には戻りません。これは頭を打ったときに限りません。体への強い打撃や、倒れた勢いでも起こり得ます。意識が低下する、嘔吐を繰り返す、頭痛が強くなっていくといった場合は、救急受診の対象です。

半年前からやった準備

準備を始めたのは半年前くらいからです。やったことは3つでした。

まず型を覚えた

指導者に見てもらいながら空手の基本動作を練習する茶帯の道場生
私がいちばん時間を使ったのは型でした。早く始めるほど楽になります。

最初に手をつけたのが型です。理由は単純で、それまで型に力を入れてこなかったからです。組手中心でやってきた人間にとって、初段の課題型は量があります。ここは早く始めた分だけ楽になります。

逆に言えば、当日型で苦労しなかったのは、半年前から潰しておいたからです。

サンドバッグで1分ラッシュを20セット

グローブを着けてサンドバッグへの打ち込みを練習する道場生
当時の私の練習量です。そのまま真似する前に、今の体力と稽古量を確かめてください。

組手対策はこれです。1分間のラッシュを20セット。10人組手が1分×10人なので、その倍を課しました。

ただし、これは当時の私の練習量です。ここにはセット間の休憩や週の実施頻度まで書いていないので、同じ負荷のメニューとしてそのまま再現できるものではありません。今の体力と、普段の稽古量に合わせて、休憩と回復も含めて段階的に量と強度を上げてください。

そして、これをやり切ってもなお、本番はしんどいです。サンドバッグは打ち返してきません。当日入ってくる打撃と、そこからの立て直しは、練習では作れませんでした。

スタミナの作り方は格闘技のスタミナの付け方、サンドバッグとミットの使い分けはサンドバッグとミット練習の違いに別途書いています。

当時行っていた、打たれ強くなるための稽古

もう一つが、打たれ強くなるための稽古です。私の道場でやっていたのは、腹を踏んでもらう、腹を叩いてもらう、太ももを蹴ってもらう、といったものでした。

ここははっきり書きます。これは当時の私の道場で行っていた稽古の記録で、この記事をもとに真似することは勧めません。指導者が見ていることや、相手の加減を信用できることだけで、安全が保証されるわけではありません。対人での稽古では、目的、ルール、その日の本人の状態、技術的な妥当性、強度、そして中止の基準を、事前に確認してください。

打撃への備えは、身体を固める稽古だけで作るものでもありません。構え、受け、距離、力みすぎない動作を含めて考える必要があります。体幹まわりの土台づくりは格闘技のための体幹トレーニングにまとめています。

落ちるのか、止まるのか

よく聞かれる話なので書いておきます。

私が見てきた範囲では、初段の審査で落ちた人はいません。ただし、10人組手を最後まで行けず、後日再審査になった人は見たことがあります。

これは当時の私の周囲での話です。必ず合格するという意味ではありませんし、合否や再審査の扱いは所属先の規定によります。

受ける前から「落ちたらどうしよう」と考える必要は、あまりないと思います。それよりも、途中で中止になった場合の再審査の扱いを先に確認しておくことのほうが役に立ちます。必要な回復と準備を経て、もう一度受けられるかどうかです。

審査の翌日と、黒帯を取ってから

稽古後に道場のベンチで水分をとって休む道場生
審査のあとは全身打撲でした。異常があれば我慢せず医療機関へ。

審査のあとは全身打撲でした。疲労が溜まっているのが自分ではっきり分かる状態です。ただ、大きな怪我はありませんでした。

そして、取ってからのほうが変わりました。よく言われる「取ってからが始まり」は、実際そのとおりでした。

何が変わったかというと、意識です。他の道場生の見本になる人間になったのだと考えるようになりました。実際、稽古の中で人に教えることが増えます。黒帯は、自分の到達点というより、周りから見られる立場になったという印でした。

これから初段を受ける人へ

白帯の道場生に構えを教える黒帯の空手経験者
黒帯は到達点ではなく、周りから見られる立場になった印でした。

怖いこともあると思います。私もそうでした。

ただ、準備さえしっかりやれば、あとは当日やり切るだけです。型は早く手をつける。組手の量は積む。条件のうち合宿だけは自分で予定を空ける。ここまでは、審査の前に自分で終わらせられます。

そのうえで、10人組手は気持ちです。私は5人目から先をあまり覚えていません。それでも最後まで行けました。苦しい場面で食らいつく気持ちは大切です。

ただし、負傷や体調に異常があるときは中止してください。そこは気持ちの問題ではありません。中止して次につなげる判断も、黒帯を目指すうえでの実力のうちです。

まとめ

  • 初段の受審条件は支部ごとに違う。稽古回数・試合・合宿の縛りは「かつ」と「あるいは」で書き方が変わり、課題型も揃っていない。自分の道場の規定を確認する
  • 私は白帯からやり直して約5年、23歳で初段。ただし復帰前にも経験があるので、未経験からの標準年数ではない
  • 条件のうち意識して取りに行ったのは合宿だけだった
  • 当日の順番は体力審査・型・筆記が先で、10人組手が最後。落としそうになった種目はなく、きついのは組手
  • 準備は半年前から。型を先に潰し、サンドバッグで1分ラッシュ20セット。ただしこれは当時の私の練習量で、そのまま再現できるものではない
  • 打たれ強くなる稽古は当時の記録で、真似することは勧めない。指導者がいることだけで安全は保証されない
  • 10人組手は、私は5人目くらいから記憶が曖昧になった。最後まで行けたのは気持ちだけ。ただし、どこできつくなるかは人によって違う
  • 頭痛、めまい、ふらつき、受け答えの異常、記憶の抜けが出たら、その場で中止して医療機関へ。脳振盪が疑われる日は組手に戻らない
  • 私の周囲では落ちた人はいないが、10人組手を最後まで行けず後日再審査になった人は見た。扱いは所属先による
  • 黒帯は到達点ではなく、周りから見られる立場になった印。取ってからが始まり

帯と級の全体像、昇級審査で何をやるのかについては空手の昇級審査と帯の色を読んでください。ブランクからの復帰そのものについては一度やめた空手に戻るときに書いています。

参考にした資料

審査の条件・内容は支部や時期によって変わります。受審する際は、必ず所属道場の最新の規定を確認してください。

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