減量・体重管理に関する注意
本記事は運営者の実体験にもとづく一般的な情報で、医療・栄養指導の代わりになるものではありません。適切な体重や減量ペースは、年齢、体格、競技、健康状態によって異なります。成長期の方、持病のある方、女性で月経に影響が出ている方は、自己判断で減量せず医師や管理栄養士に相談してください。短期間で大きく体重を落とす方法(脱水を伴う急速減量)は健康被害のリスクがあり、本記事は推奨しません。
「格闘技 減量」で調べると、水抜き、サウナ、脱水といった言葉が並びます。
私は伝統派空手1年・極真空手約15年を経験し、軽量級(65kg以下)と中量級(65〜75kg)の両方で試合に出ました。全日本ウエイト制空手道選手権大会に2回、全日本無差別空手道選手権大会に1回出場しています。
正直に書きます。私は減量でほとんど困っていません。困ったのは増量の方でした。
この記事では、私が実際にやっていたこと、周りで見た失敗、そして「なぜ私の周りでは減量より増量が問題になったのか」を、公開されている資料とあわせてまとめます。
先に結論
- 私がいた環境では体重無差別の大会を目標にする人が多く、階級を落とす人がそもそも少なかった
- 私が落としていたのは1試合あたり2kg程度。試合が決まってから当日までの合計で、練習量を増やしたら落ちていった
- 一方、中量級では増量が全く進まず、そこが一番の悩みだった
- 周りには、無理な減量をして試合で体が全く動いていない人がいた
- 「体重の◯%までなら安全」という境界はありません。小さい減量でも影響は報告されています
- 体重を落とすかどうかは、「落とした後にどれだけ動けるか」とセットで考えるべき
前提:階級の区切りは、流派と大会によって違う
減量の話に入る前に、ここを押さえておかないと話が噛み合いません。
私が出ていた大会では、おおむね次の区分でした。
| 階級 | 体重 |
|---|---|
| 軽量級 | 65kg以下 |
| 中量級 | 65kg超〜75kg |
| 重量級 | 75kg超 |
ただし、これは固定されたものではありません。大会によっては「70kg以下・80kg以下・80kg超」で分かれていたこともありました。
階級の区分は、流派・団体・大会によって異なります。そして当然、区切りが変われば「自分がどの階級に入るか」も「何kg落とす必要があるか」も変わります。
ネットで「格闘技の階級」を調べても、それがあなたの出る大会に当てはまるとは限りません。出場予定の大会の要項を必ず確認してください。減量の計画は、そこからしか立てられません。
なぜ私の周りでは「減量」より「増量」だったのか
これは競技の構造の話です。
私がいた環境では、無差別(体重無差別の大会)を目標にしている人が多いという実感がありました。私もそうでした。極真には複数の団体・大会があり、位置づけや事情は団体によって異なります。ここで書けるのは、あくまで私が見てきた範囲の話です。
体重が重く、体が大きい方が有利に働く場面は確かにあります。そして極真を始める人には「強くなりたい」という動機の人が多い。だとすれば、わざわざ体重を落として階級を下げる理由がありません。
実際、私の周りでは減量して階級を落とす人より、増量して体を大きくし、階級を上げる人の方が多かったです。
ボクシングやMMAのように、階級を落とすことが戦略として一般的な競技とは前提が違う、という点だけ押さえておいてください。
試合に出るまでの流れは空手の試合に出るまでの流れにまとめています。

私が実際にやっていた減量
軽量級(65kg以下)で試合に出ていたとき、落としていたのは1試合あたり2kg程度でした。
ここは誤解のないように書いておきます。この2kgは、試合が決まってから試合当日までの合計です。数週間かけて落としていた数字であって、直前に一気に落としていたわけではありません。
やっていたことは、拍子抜けするほど単純です。
- 試合が決まってから始める(何ヶ月も前から準備していたわけではない)
- 練習量を増やす。そうすると落ちていった
- ラーメンやスイーツなど、高カロリーなものを控える
これだけです。「◯◯だけ食べる」といった極端な食事制限はしていませんし、体重が落ちなくて焦った経験もありません。
ただし、「練習量を増やす」を軽く読まないでください。私は当時、日常的に稽古している状態からさらに積み増しただけです。運動習慣が少ない状態から一気に量を増やせば、怪我や慢性的な疲労につながります。増やすなら段階的に、睡眠と休養を確保したうえで。体重が落ちても稽古の質が落ちていたら意味がありません。
なぜ困らなかったのか
後から資料を見て納得したのですが、除脂肪量(筋肉など)を保ちながら体脂肪を落とすには、1週間あたり体重の0.5〜0.7%程度の緩やかなペースが適しているとされています。エリート選手を対象にした研究では、週0.7%のゆっくりした減量でのみ除脂肪量が増加し、それより速いペースでは除脂肪量が減ったと報告されています。
65kgの選手が2kg落とすのは約3%です。試合が決まってから数週間かけて、しかも練習量が増えている状態で落としていたので、結果的にこのペースに収まっていたのだと思います。
私が減量で困らなかったのは、私の意志が強かったからではなく、落とす量が少なく、期間があり、運動量が増えていたからです。ここを取り違えると、同じやり方で失敗します。
参考資料:
- ウェイトコントロールガイドブック(ハイパフォーマンススポーツセンター/国立スポーツ科学センター)
- ISSN position stand: nutrition and weight cut strategies for mixed martial arts and other combat sports(2025)
正直に書きます:当日計量で、体を温めて臨んだこともある
私が出ていた試合は当日計量でした。
体重ギリギリを狙っていたので、計量前に「あと数百グラム」という状態になることがあります。そういうときは、ランニングなどで体を温めてから計量に臨んでいました。
念のため書いておくと、これは1kgに満たない、数百グラム単位の微調整の話です。前項の2kgは数週間かけて落とした合計で、当日に落としていた量ではありません。
そのうえで、はっきり書きますが、推奨できる方法ではありません。
理由は2つあります。
1つ目。当日計量は、計量から試合までの回復時間がほとんどありません。前日計量なら食事と水分で戻す時間がありますが、当日計量ではそれができない。落とした状態のまま試合に入ることになります。
2つ目。汗で体重を落とすのは、水分を抜いているだけです。減った体重のほとんどは体水分で、脱水による体調不良やパフォーマンス低下につながります。
ここで、ひとつはっきりさせておきたいことがあります。
短期間で体重を大きく落とすことを急速減量(rapid weight loss)と呼びますが、「何%からが急速減量か」という単一の定義はありません。文献では体重の5%前後が目安として使われることが多い一方、それより小さい減量幅でも、腎機能の指標や免疫系への影響が報告されています。格闘技選手を対象にした系統的レビューでも、急速減量が腎機能マーカーや免疫指標に及ぼす影響が検討されています。
つまり「5%未満なら安全」という境界ではありません。ここを線引きとして受け取らないでください。
私がやっていたのは数百グラムの微調整で、文献で扱われるような減量幅とは規模が違います。それでも、やっていることの方向は同じです。汗で水分を抜いて体重を落としている。同じ発想を1kg、2kg、3kgと広げていけば、上に挙げたリスクの領域に入っていきます。
「ちょっとだけなら大丈夫」が「もう少しなら大丈夫」に変わっていくのが、この手のやり方の怖いところだと思っています。
参考資料:
- Effects of Rapid Weight Loss on Kidney Function in Combat Sport Athletes(Medicina, 2021・系統的レビュー)
- Effects of Rapid Weight Loss on the Immune System in Combat Sports Athletes: A Systematic Review(Int J Mol Sci, 2026)
- ISSN position stand: nutrition and weight cut strategies for mixed martial arts and other combat sports(2025)
- 急速な減量は急性腎障害のリスク上昇の可能性(日本スポーツ栄養協会・解説記事)
周りで見た「失敗した減量」
無理な減量をしてきたのだと思いますが、試合で体が全然動いていない選手を見たことがあります。
本人に確認したわけではないので、原因が減量だと断定はできません。ただ、もしそうだとしたら、勝つために落とした体重で負けているということになります。
減量の目的は、軽い階級で有利に戦うことのはずです。落とした結果、本来の動きができなくなるなら、何のために落としたのか分からなくなる。
体重を落とすかどうかは、「落とした後に自分がどれだけ動けるか」とセットで判断してください。計量をクリアすることがゴールではありません。

本題:私は増量の方がずっと難しかった
中量級(65〜75kg)で試合に出ていた時期、増量がなかなかできませんでした。
頑張って食べまくっていましたが、思うように増えない。稽古量が多いと、食べても消費が追いつかないからです。しかも追い込んだ日ほど食欲が落ちるので、一番食べるべき日に食べられないという悪循環がありました。
減量の記事はたくさんありますが、格闘技をやっていて本当に困るのは増量の方だったというのが私の実感です。
増量の考え方(一般的な整理)
体重を増やすには、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っている必要があります。ただし、アスリートの増量は単に体重を増やせばよいものではなく、体脂肪を増やさずに筋肉を増やすことが目的になります。
たんぱく質については、国際スポーツ栄養学会(ISSN)の見解で、運動習慣のある人は1日あたり体重1kg当たり1.4〜2.0gが目安として示されています(健康な運動実施者を主な対象とした一般的な範囲です)。
エネルギー必要量の算出には、日本の競技者向けにJISS式(除脂肪体重×28.5=基礎代謝量、これに身体活動レベルを掛ける)という考え方があります。稽古量の多い競技者では身体活動レベルが高くなるため、必要量も大きくなります。
私の失敗を今の言葉で言い直すと、「消費に対して摂取が足りていなかった」だけです。気合いの問題ではなく、計算の問題でした。当時の私は必要量を計算したことが一度もありませんでした。
参考資料:
- International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise
- アスリートの効率的な筋量増加にむけた運動と栄養摂取(日本スポーツ栄養研究誌)
スタミナと稽古量の関係は格闘技のスタミナの付け方、たんぱく質の摂り方はプロテインの選び方もどうぞ。
計量後に食べていたもの
参考までに、私が計量後に摂っていたものを挙げます。
- おにぎり
- プロテイン
- EAA
- バナナ
- 牛乳
消化に負担がかかりにくい糖質と、たんぱく質を分けて摂っていた形です。戻し方で失敗した記憶は特にありません。当日に落としていた量が数百グラムと小さかったことが大きいと思います。
ただし補足しておくと、当時の私が脱水状態だったかどうかは測っていないので分かりません。体重や体組成、尿の状態を記録していたわけではなく、「体調に問題を感じなかった」というだけの話です。感覚は当てになりません。
大幅に落とした場合の戻し方は、脱水の程度によって必要な対応が変わります。自己判断で一気に戻さず、経験のある指導者や専門家に相談してください。
今の自分が、当時の自分に言うとしたら
一番の反省は、食事の量を計算していなかったことです。
増量が進まなかったのは根性の問題だと思っていましたが、実際には稽古で消費している分に対して食べる量が足りていなかっただけでした。ここを数字で把握していれば、あの数年は違っていたと思います。
そのうえで、補助の話もしておきます。私はEAA・クレアチン・グルタミンをもっと早く取り入れればよかったと感じています。特にグルタミンは、追い込んだ時期や試合前に風邪をひきやすかったのが、飲み始めてから体調を崩すことが減り、回復も早くなったように感じました。
ただし、正直に補足します。グルタミンの運動パフォーマンスや免疫への効果は、研究全体では一貫しておらず限定的とされています。私の実感がそのまま他の人に当てはまるとは限りません。そして順番を間違えないでください。土台は食事と稽古と睡眠で、サプリはその穴を埋める補助です。食事を計算せずにサプリから入るのは、私がやった失敗の裏返しになります。
各成分の詳しい話はサプリは何から?EAA・クレアチン・グルタミンの選び方にまとめています。
逆に「これはやらない方がよかった」という減量上の後悔は、私にはありません。それは私が正しかったからではなく、そもそも大きく落とす必要がなかったからです。落とす必要がなかったこと自体が、一番の幸運だったと思っています。
まとめ
- 階級の区分は流派・団体・大会によって違う。出場予定の大会の要項から確認する
- 私がいた環境では無差別を目標にする人が多く、減量して階級を落とす人より、増量して階級を上げる人の方が多かった
- 私が落としていたのは1試合あたり2kg程度、しかも試合が決まってから当日までの合計
- 困らなかったのは意志の強さではなく、落とす量が少なく、期間があり、運動量が増えていたから
- 除脂肪量を保つには週0.5〜0.7%程度の緩やかなペースが適しているとされる
- 練習量を増やすなら段階的に。睡眠と休養を確保する。急に増やせば怪我と疲労につながる
- 「何%からが急速減量か」に単一の定義はなく、「5%未満なら安全」という境界でもない。小さい減量幅でも腎機能や免疫への影響が報告されている
- 当日計量前に汗で調整したことはあるが数百グラム単位。同じ発想を1kg、2kgと広げてはいけない
- 周りには無理な減量で体が動いていない選手がいた。落とした後に動けるかとセットで考える
- 格闘技で本当に難しいのは増量の方。気合いではなく摂取と消費の計算の問題
参考資料について
本記事は運営者の実体験に加え、公開されている公的機関・専門団体の資料および査読付き論文を参照しています。研究対象は主に競技者や健康な成人であり、結果がすべての人に当てはまるとは限りません。指針は今後更新される可能性があります。減量や増量に不安がある場合は、医師や管理栄養士に相談してください。
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