運動に関する注意
本記事は、極真空手で競技経験のある運営者の実体験をもとにした一般的な情報です。紹介する練習量は当時の競技者としてのものであり、そのまま真似することを勧めるものではありません。適切な運動の強度・量は年齢、体力、体調によって異なります。高血圧、糖尿病、心臓・関節などの不安、運動で悪化する症状、服薬がある方は、実施前に医師や専門家へ相談してください。運動中に胸の痛み、動悸、めまいやふらつき、いつもと違う強い疲れ、関節や筋肉の強い痛み、冷や汗などを感じた場合は、直ちに中止してください。
「スタミナをつけたいなら走り込め」。格闘技では昔からよく言われますが、極真空手を約15年続けてきた私の実感は少し違います。長く走るだけで試合向けのスタミナを十分に作れるとは限らず、ランニング以外にも選択肢がある——この記事では、私が実際にやっていたメニューと、初心者が無理なく取り入れる方法を紹介します。
先に結論
- 長く動くための「土台」と、強い動きと回復を繰り返す「攻防」を目的に応じて組み合わせる
- 競技者の本数をそのまま真似せず、初心者は週2回・少ない本数から始める
- 走るのが苦手なら、ミットやサンドバッグのラッシュも選択肢になる
スタミナが切れると何が起きるか(実体験)
私自身、組手でスタミナが切れた経験があります。起きたことは3つです。
- 手数が減る:攻撃を出す余力がなくなる
- 腹(ボディ)が効きやすくなる:私の場合、疲れた状態では同じような攻撃でもダメージを強く感じた
- 動けなくなる:足が止まり、防御も反撃もできない
体感としては、こうなります。
呼吸するのもしんどい。体が重い。それでも、気力だけで体を動かしているイメージです。
技術や作戦の話ではなくなります。動かない体を、気持ちで動かしている状態です。
つまりスタミナは、攻撃力であると同時に防御力でもあります。どれだけ技があっても、動けなければ使えません。
私が走っていた理由:極真の試合は「本戦で決めにいく」もの
なぜ走り込みをしていたのか。試合の時間の作りから逆算していました。
私が出ていた試合は、次の形です。
| 区分 | 時間 |
|---|---|
| 本戦 | 2分または3分 |
| 延長(本戦で決着がつかない場合) | 2分 |
| 再延長(大きい試合の場合) | 2分 |
ここで大事なのは、延長を計算に入れて、本戦でスタミナを温存する、という考え方をしていなかったことです。
基本は本戦で決めにいきます。理由は単純で、延長を気にしてスタミナを残したのに、本戦で負けたら意味がないからです。
つまり必要だったのは、2〜3分を全力で出し切って、なお延長で動ける状態でした。長い時間ゆっくり動き続ける力ではありません。この前提が、後で書くメニューの中身を決めています。
試合の流れ全体については空手の試合に出るまでの流れにまとめています。
格闘技で意識したい2つの持久力
- 土台の持久力:練習を最後までやり切り、攻防の合間に回復するための力。ランニングなどの有酸素運動で鍛えやすい
- 攻防のスタミナ:全力で動いて、呼吸を整えて、また動く力。ダッシュや打ち込みの反復で鍛えやすい
私の経験では、長く動くための土台と、強い動きと回復を繰り返す力の両方を鍛えることが役立ちました。ただし、必要な配分は競技、練習内容、体力によって異なります。格闘技選手を対象とした研究では、ランニングや競技動作を用いた高強度インターバルトレーニング(HIIT)が、有酸素・無酸素能力の改善に役立つ可能性が示されています。研究対象は主に競技者であり、初心者に同じ強度や本数が適することを示すものではありません。

私がやっていた走り込みメニュー(実例)
先に前提を書いておきます。
- 走っていたのは、基本的に稽古のない日です
- 誰かに言われて始めたわけではありません。自分で決めてやっていました
- 場所は家の近くで、自分でいろいろなコースを作って走っていました
- 近くに1周400mのコースがあるスポーツ公園があり、そこでダッシュをしていました
メニューに400m走が入っているのは、理論から選んだのではなく、家の近くに1周400mのコースがあったからです。走る場所が先にあって、メニューが後から決まりました。
当時、仕事が忙しかったため、次のメニューを「時間があるときに」組み合わせてやっていました。毎日すべてをやっていたわけではありません。
- ランニング:5kmくらいを週1〜2回
- 400m走:10本
- 坂ダッシュ:100mほどの坂を20本
- 階段ダッシュ:長めの階段を利用
- 電柱ダッシュ:ランニングの途中で、電柱から電柱までダッシュとジョギングを交互に繰り返す
また、道場まで約3kmの距離に住んでいたので、準備運動がわりに走って通うこともありました。移動を練習に変えると、忙しくても時間を作りやすくなります。
これは競技者として稽古していた当時の量です。特に400m走10本や坂ダッシュ20本は、初心者向けではありません。短い距離・少ない本数から始め、疲労が翌日の生活や稽古に残る場合は減らしてください。
スタミナが「ついた」とは、どういう状態か
ここは誤解されやすいところなので、正確に書きます。
まず、スタミナに完成はないと思っています。
しんどいのは、いつまでもしんどいです。鍛えたら楽になる、という種類のものではありませんでした。
では何が変わるのか。私の実感では、この2つです。
- 「スタミナが切れた」と思ってからも、体が動く
- スタミナ切れになるまでの時間が伸びる
「息が上がらなくなる」ではありません。息は上がります。上がった状態で動ける時間が長くなる、という変化でした。
これは目標の立て方にも関わります。「楽に動けるようになる」を目安にすると、いつまでも達成できません。切れるまでの時間と、切れてから動ける量で見る方が、変化に気づけると思います。効果の出方には個人差があります。
走り込み以外の選択肢:打ち込み系の練習
走り込み以外で「効いた」と感じた練習はこれです。
- ビッグミットの打ち込み:2分×20セットなど
- サンドバッグでのラッシュ:短時間の全力連打を繰り返す
- バーピージャンプ:全身を使う高負荷な運動
実際の攻防に近い動きで持久力を鍛えやすいのが、打ち込み系の強みです。技術練習を兼ねられるので、時間のない人ほど効率的だと感じます。ただし、2分×20セットは当時の競技者メニューです。フォームが崩れるほど追い込まず、初心者は下の目安まで大きく減らしてください。
初心者向け:週2回から始めるメニュー例(筆者案)
最初から競技者の量をこなす必要はありません。以下は、公的機関が示す一律の運動処方ではなく、筆者の経験をもとに負荷を抑えて組んだ開始例です。運動習慣がない方は、Aの速歩だけから始めても構いません。Bは全力ではなく、フォームを保てる範囲に抑えてください。年齢、既往歴、服薬、現在の体力によって適切な強度は異なります。
| 日 | 目的 | 内容の目安 |
|---|---|---|
| A | 土台 | 会話できる程度のランニングまたは速歩を20〜30分 |
| B | 攻防 | 30秒ややきつく動く+60〜90秒ゆっくり動くを4本から。速めのランニング、ミット、バッグのどれか1種。全力ではなく、フォームを保てる強度にする |
開始前はウォームアップを行い、終了後は急に止まらず、呼吸を整える時間を取ります。
2日は連続させず、少なくとも間に休養日を入れます。道場で強度の高い組手やミットを行った週は、Bを省いてAだけにしても構いません。翌週は「時間」か「本数」のどちらか一方だけを少し増やします。
走るのが嫌いな人・時間がない人へ
私の考えでは、スタミナ作りの手段をランニングだけに限定する必要はありません。ラッシュ系の打ち込みも、格闘技に近い動きで持久力を鍛える選択肢になります。ただし、健康づくりの土台として軽い有酸素運動にも意味があります。完全に一方へ偏らず、歩く・自転車に乗るなど、続けられる形を選ぶのが現実的です。
時間がない人は、すべてをやろうとせず、優先順位をつけて自分のペースで練習すれば大丈夫です。続けられる形を選ぶことが、結局いちばんスタミナにつながります。
ミットやサンドバッグの使い方は、サンドバッグとミット打ちの効果的な使い方で詳しく書いています。
今なら、やり方を変えます
当時信じていて今は違うと思うこと、という意味では、特にありません。ただし、配分は変えます。
今なら、5km走の一部を、試合時間と休息時間に合わせたインターバルやミットの反復へ置き換えます。400mの本数を単純に増やすのではなく、1本ごとの質、休息、道場稽古との合計負荷を見て調整します。
私に必要だった2〜3分の攻防と、延長でも動く力は、5km走だけでは十分に再現できません。長く動く土台を残しつつ、試合に近い強い動きと回復の反復を増やすべきだったと考えています。
当時の私は「走り込め」という言葉をそのまま受け取って、距離を踏むことに時間を使っていました。競技の時間と攻防・休息のリズムから練習を組み直す、という発想が足りていませんでした。
これから始める人には、試合時間、延長の有無、攻防と休息のリズム、普段の道場稽古を確認し、合計負荷を見ながら練習内容を組むことを勧めます。
正直に書くと、今はスタミナ作りをしていません
現在の話も書いておきます。
私は今、スタミナのための練習は特にやっていません。
理由は1日5食の記事に書いたことと同じで、もう現役ではないからです。今やっているのは週2回×30分の筋トレで、目的は体の維持です。
試合に出ていた頃と同じ基準を自分に課す必要はないと考えています。目的が変われば、必要な練習も変わります。この記事に書いた競技者向けのメニューも、そういうものとして読んでください。
まとめ
- スタミナ切れは「手数が減る・ボディが効く・動けない」。スタミナは攻撃力であり防御力
- 土台の有酸素と、強い動きと回復を繰り返す力を目的に応じて組み合わせる
- 筆者の実例は競技者当時の量。初心者は週2回、少ない本数から始める
- 走り込み以外に、ビッグミットやサンドバッグのラッシュ系打ち込みも選択肢になる
- 道場稽古の強度と合わせて調整し、継続できる量を選ぶ
体づくりの土台はパンチ力を上げる筋トレ完全ガイドと蹴りの威力を上げる下半身トレーニング5選、忙しい人は週2回×30分で体を維持する筋トレもどうぞ。打たれ強さを高めたい人は、打たれ強さは鍛えられるか?【体幹ともらい方】もどうぞ。
参考資料
- Effects of high-intensity interval training on aerobic and anaerobic capacity in olympic combat sports(2025)
- Effects of High-Intensity Interval Training in Combat Sports(2020)
- WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」身体活動・運動を安全に行うためのポイント
稽古全体の流れは空手の稽古では何をするのかにまとめました。

