この記事について
本記事は運営者の実体験と、道場で見てきた範囲の観察です。統計調査ではありません。
「辞めたい」の背景に、指導者からの暴力・暴言、ハラスメント、仲間からのいじめがある場合があります。その場合、続けさせることは解決になりません。子ども自身が相談できる窓口として、日本スポーツ協会(JSPO)が「スポーツにおける暴力行為等相談窓口(子ども用)」を設けています。
また、けがや体調の変化、極端な意欲低下が続く場合は、医療機関への相談も検討してください。
「空手を辞めたい」
子供にそう言われたとき、親はどうするか。続けさせるべきか、辞めさせるべきか。
私は極真空手を約15年やりましたが、その途中で一度辞めています。中学1年で辞めて、高校3年で戻りました。
そして今は、3人の子供を育てる親でもあります。
この記事では、辞めた側の実感と、道場で見てきた親の対応の違いを書きます。
先に結論
- 「辞めたい」は例外ではありません。若年競技者の約70%が13歳までに組織的スポーツをやめるという報告があります(AAP臨床報告)
- まず理由を聞いてください。その中には、続けさせてはいけない理由が混ざっています
- 私は中1で辞めて、高3で戻りました。そして父は、辞めるとき特に何も言いませんでした
- 私のいた道場も、基本的に引き止めませんでした
- 「続けさせて良かった」に見えたケースはあります。ただし「辞めさせて良かったか」は誰にも分かりません
- 逆効果だと感じたのは、試合で負けて親が怒る、稽古を見学してダメ出しする
- 効いていたのは、結果ではなく過程を褒める、話を聞く、練習に付き合う
まず前提:「辞めたい」は例外ではありません
米国小児科学会(AAP)の臨床報告では、若年競技者の約70%が13歳までに組織的スポーツへの参加をやめるとされています。けがと燃え尽きは、その主な要因として挙げられています(70%全員の理由がけがや燃え尽きだという意味ではありません)。
バーンアウト(燃え尽き)が若年競技者全体でどの程度起きているかは、正確な割合が分かっていません。一方、スウェーデンのエリート青少年競技者を対象にした1つの研究では、最大9%がバーンアウトの定義を満たしたと推定されています。またAAPは、早い段階で1つの競技に特化した選手ほど、燃え尽きによる離脱が多かったとする研究も紹介しています。
バーンアウトを疑う様子として、次のようなものが挙げられています。
- 倦怠感
- 抑うつ的な様子
- 睡眠の乱れ
- 不安、イライラ
- 集中力の低下
- 体重の変化
- 筋骨格系の不調
- 学業や運動の成績の低下
「うちの子だけが根性がない」と決めつける必要はありません。スポーツを辞めたいと思うこと自体は珍しいことではないので、まず理由を聞くところから始めてください。
参考資料:
- Overuse Injuries, Overtraining, and Burnout in Young Athletes(米国小児科学会/Pediatrics, 2024・全文無料)
- 上記のPubMed収載情報(PMID 38247370)
- 上記の日本語解説(日本スポーツ栄養協会)
- 発育期のスポーツ活動ガイド(日本スポーツ協会)
まず理由を聞いてください。続けさせてはいけない理由が混ざっています
これが最初にやることです。
正直に書くと、私が道場で見た「辞めたい」と言っていた子について、私はその理由を知りません。その子は結局辞めました。理由は分からないままです。
だからこそ思うのですが、外から見て理由が分かることは、あまりありません。
そして「辞めたい」の中には、続けさせることが解決にならないものがあります。
- 指導者からの暴力、暴言、人格否定
- 仲間からのいじめ
- 本人が言い出せずにいるけがや体の不調
- 燃え尽き(上に挙げた様子が続いている場合)
これらが背景にある場合、「もう少し頑張れ」は事態を悪化させます。親が続けさせようとすればするほど、子供は言い出せなくなります。
スポーツ庁は暴力・ハラスメントの根絶に向けた取り組みを進めており、日本スポーツ協会(JSPO)には「スポーツにおける暴力行為等相談窓口(子ども用)」があります。
これは専門相談員(弁護士)に無料で直接相談できる窓口で、ふりがな付きで書かれています。クラブチーム、部活動、スポーツ少年団などの活動中に、監督やコーチから怒鳴られた、叩かれた、理由もなく体を触られたといった場合が対象です。本人だけでなく、友だちやチームメイトが嫌な思いをしているのを見かけたときも相談できます。
対応できる内容には範囲があるため、相談前にサイトの説明をご確認ください。保護者の方が相談する場合の窓口も、同じくJSPOのサイトに案内があります。

「厳しい指導」と「許されない行為」は別のものです。この線引きについては空手道場の選び方にも書きました。
参考資料:
私も辞めました。中1で辞めて、高3で戻りました
ここからは私の話です。
小学3年で父の勧めで空手を始めて、中学1年で辞めました。そして高校3年で戻ってきました。
このブログで書いている「極真空手 約15年」は、実際に稽古していた期間の合計です。この空白期間は含んでいません。ずっと途切れずに続けてきたわけではないということです。
父は、特に何も言いませんでした
私が辞めるとき、父は特に何も言いませんでした。
空手を勧めたのは父です。出稽古にも連れて行ってくれた人です。それでも、辞めるときには止めませんでした。
今になって思うのは、これが大きかったということです。
もしあのとき引き止められていたら、戻ってきたかどうかは分かりません。辞めることを責められなかったから、戻る場所として残っていたという面はあると思います。
道場も引き止めませんでした
私が所属していた道場は、基本的に引き止めませんでした。「寂しくなりますね」と伝えるくらいです。
これも同じだと思っています。引き止められて辞めた場所には、戻りにくい。
そして実際、私だけではありません。空手が続かない理由にも書きましたが、部活を引退して、受験が終わって、といったタイミングで戻ってくる子は実際にいます。
「続けさせて良かった」に見えたケース
一方で、続けさせたことが良い方に働いたと見えたケースもあります。私が見た範囲では、こういうものでした。
1つ目。元々やんちゃだった子が、改心して真面目に空手をやるようになるパターン。
2つ目。乗り気ではなかった子が、試合や審査で結果を出し、成功体験を積んで、空手が楽しくなっていくパターン。
2つ目は、順番が重要です。「楽しいから続ける」ではなく、「結果が出たから楽しくなった」という順番でした。
だから、まだ楽しくないという理由だけで判断するのは早いという見方もできます。楽しさが後から来ることはあります。
審査や試合については空手の昇級審査と帯の色、空手の試合に出るまでの流れにまとめています。
ただし、「辞めさせて良かったか」は誰にも分かりません
ここは正直に書きます。
「辞めさせて良かった」と言えるケースが私にあるかというと、分かりません。
理由は単純です。続けさせていたらどうなっていたかを、誰も知らないからです。
辞めた子がその後うまくいっていても、続けていたらもっと良かったかもしれない。逆もあり得る。比較する対象が存在しません。
だから、この記事も含めて、「こうすれば正解」という話は誰にもできません。続けさせた結果が良く見えるケースを紹介しましたが、それも続けさせたから良くなったのか、元々そうなる子だったのかは区別がつきません。
判断するのは親であり、その判断が正しかったかは、たぶん一生分からないというのが実際のところだと思います。
逆効果だと感じた、親の対応
見てきた中で、明確に逆効果に見えたものが2つあります。
- 試合で子供が負けて、親が怒る
- 普段の稽古を見学して、ダメ出しをする
全員がこのやり方でダメになるとは思いません。ただ、このやり方で続いている子を、私は見たことがありません。
これは子供に空手を習わせるべき?でも書いた話と重なります。親が結果に熱中しすぎると、子供は親の顔色をうかがいながら空手をやることになります。
そして、そうなった子供が「辞めたい」と言い出したとき、理由が「空手が嫌」なのか「親の反応が嫌」なのかは、外からは区別がつきません。
これは、目標や努力の基準をなくすという意味ではありません。稽古で求める厳しさと、負けた結果を親が責めることは別です。
効いていたと感じた、親の対応
逆に、良い方に働いていたと感じたのは3つです。
- 結果ではなく、過程を褒める
- 子供の話を聞いてあげる
- 子供の練習に付き合ってあげる
3つ目は、私自身が受けたものでもあります。父は出稽古に連れて行ってくれました。技術を教えたわけではなく、付き合ってくれたということです。
そして1つ目。空手はそもそもしんどいものです。続けているだけで偉いと、私は思っています。勝敗は本人にもどうにもならない部分がありますが、続けたこと、やったことは本人の努力そのものです。

自分の子が「辞めたい」と言ったら
最後に、3人の子の親としてどうするかを書きます。手順としては、こうなります。
- まず理由を聞く
- 暴力・いじめ・けがなど、安全上の問題を先に分ける
- 練習量・曜日・指導者・道場など、変えられる条件を試す
- 続ける/休む/道場を変える/辞める を本人と整理する
「辞めるな」から入りません。理由を聞くところから入ります。
そして改善できないものは、実際にあります。道場の方針、指導者との相性、生活との両立、本人の興味の移り変わり。それを気合いで乗り越えろというのは、無理な話です。
ただ、選択肢は「続ける」か「辞める」の二択ではありません。改善できない、または安全上そのまま続けるべきでない場合、その道場で続けることにはこだわりません。休む、クラスや道場を変える、辞める——どれも選択肢として本人と一緒に考えます。
私自身が、一度離れて戻ってきた側です。「休む」は「辞める」とは違います。
最後に本人と整理するのは、「今はどれを選びたいか」です。辞めさせないための引き止めではありません。本人に、自分で決めたという実感を持ってもらうためです。親に決められて辞めたのなら、それは本人の選択になりません。
そのうえで、一度決めても、後から選び直していいと伝えます。これが一番大事かもしれません。私が高3で戻れたのは、辞めたことを責められなかったからです。
まとめ
- 「辞めたい」は例外ではない。若年競技者の約70%が13歳までに組織的スポーツをやめるという報告がある(けが・燃え尽きは主な要因の一つ)
- まず理由を聞く。暴力・暴言・いじめ・けが・燃え尽きが背景にある場合、続けさせることは解決にならない
- 子ども自身が相談できる窓口として、JSPOの「スポーツにおける暴力行為等相談窓口(子ども用)」がある
- 私自身、中1で辞めて高3で戻った。父は辞めるとき何も言わなかった
- 所属道場も基本的に引き止めなかった(「寂しくなりますね」と伝える程度)
- 引き止められて辞めた場所には、戻りにくいというのが私の実感
- 続けさせて良かったに見えるケースはある。ただし「辞めさせて良かったか」は誰にも分からない(比較対象がないため)
- 逆効果に見えたのは、負けて怒る/稽古を見てダメ出しする。このやり方で続いた子は見たことがない
- 効いていたのは、過程を褒める/話を聞く/練習に付き合う
- 自分の子なら、理由を聞く → 安全上の問題を分ける → 変えられる条件を試す → 続ける/休む/道場を変える/辞める を本人と整理する
- 選択肢は二択ではない。そして一度決めても、後から選び直していい
参考資料について
本記事は運営者の実体験と観察に加え、公開されている専門団体・公的機関の資料を参照しています。子どもの発達や状況には個人差があり、本記事の内容がすべての家庭に当てはまるものではありません。深刻な悩みがある場合は、相談窓口や専門家へご相談ください。
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