このサイトでは、道場選びでも子供に習わせるかでも、「指導者を最優先で見てください」と書いてきました。
ただ、では何を見ればいいのかを書いていませんでした。この記事で埋めます。
私は極真空手を約15年やり、その間に複数の指導者を見てきました。指導者が変わって道場の雰囲気が変わるのも経験しています。
先に結論
- 見るのは言葉遣い・佇まい・指導の仕方の3つです
- 言葉遣いで一番はっきり出るのは「お前」と言わないこと、語尾です
- 良い指導者だと感じた人は生徒をよく見ていました。そして根性論だけで終わらず、目的を説明して本人に合わせる指導をしていました
- やめた方がいいと思ったのは怒鳴る指導です。私が通っていた道場にはありませんでした
- 罰として正座をさせる、走らせるといったことも、私の道場ではありませんでした
- 私がいた団体では黒帯が指導員、茶帯が準指導員でした。帯の色である程度は分かります
- 保護者との距離は話しかけやすいが、一線は引いている。保護者ではなく生徒と向き合っている感じでした
- 指導者は1回の見学でも、重要な判断材料を得られます。ただし見学者を意識して普段と違う振る舞いになる可能性もあります。人格否定や安全無視を一度でも見たら、その1回で候補から外す判断材料になります
- 練習内容は日によって変わるので、そちらは1回では分かりません
- 指導者が変われば、道場の雰囲気は変わります
見るのは3つ:言葉遣い・佇まい・指導の仕方
道場を選ぶとしたら、私が指導者の何を見るか。答えは3つです。
| 言葉遣い | どういう言葉で生徒に話しているか |
| 佇まい | その人がどういう立ち方、態度でそこにいるか |
| 指導の仕方 | 何をどう教えているか |
技術の高さや競技実績ではありません。そこは見ても分かりませんし、分かったとしても指導の良し悪しとは別だと思っています。

言葉遣い:「お前」と言わないか、語尾はどうか
3つの中で、一番はっきり差が出るのが言葉遣いです。
具体的に見ているのは、この2つです。
- 「お前」と言わないこと
- 語尾
同じ内容を伝えるのでも、「お前、何やってんだ」と「今のはこうしてみて」では別のものです。内容ではなく、そこに含まれる扱い方が違います。
語尾も同じです。命令形で終わるのか、そうでないのか。細かいようですが、見学中に一番耳に入るのはここです。
公的な指針も、同じ方向を示しています
これは私の好みの問題ではないようです。日本スポーツ協会の「スポーツ指導者のための倫理ガイドライン」には、次の記述があります。
たとえプレーヤーを励ましたり動機づけるための声かけであっても、指導者は一般社会で受け入れられるような言葉遣いをするよう心がけましょう。
同ガイドラインは、励ましや動機づけのためであっても、一般社会で受け入れられる言葉遣いを心がけるよう求めています。励ます目的だけで、相手の人格や尊厳を傷つける言葉が正当化されるわけではない、と読めます。
同ガイドラインは、プレーヤーの人格や尊厳を否定するような発言は言葉の暴力になるともしています。
参考資料:
良い指導者だと感じた人は、何が違ったか
私が「この人は良い指導者だ」と感じた人には、共通点が2つありました。
1. 生徒をよく見ている
全体に号令をかけているだけではなく、個々の生徒を見ています。
これは見学でも分かります。誰かが動きを間違えたとき、気づくかどうか。気づいて声をかけるかどうか。人数が多くても見ている人は見ています。
2. 根性論だけで終わらず、目的を説明して本人に合わせる
もう1つはここです。「気合いだ」「根性で乗り切れ」だけで終わらないということです。
なぜその練習をするのか、なぜその順番なのか。説明ができる人とできない人がいます。
ただし、研究論文をその場で説明する、という意味ではありません。見学で確認できるのは、この2つです。
- 練習の目的を説明できるか
- 発育段階・技能・健康状態に合わせて、内容や強度を変えているか
先ほどのガイドラインにも、指導者に必要な姿勢として「発育発達段階や技能レベルに即して指導の内容と方法を工夫する」「プレーヤーの健康状態に注意をはらい、ケガや病気を起こさないよう配慮する」が挙げられています。
怒鳴る指導について
逆に「これはやめた方がいい」と思ったのは、怒鳴る指導です。
正直に書くと、私は全てを否定するつもりはありません。広い道場への号令や、危険を止める緊急の指示では、声を張る必要があります。

ただ、基本的にはよくないと思っています。
そして私が通っていた道場には、怒鳴る指導はありませんでした。15年通って、それでも稽古は成立していました。怒鳴らないと指導できない、ということはないと考えています。
ここは私の意見と、公的な立場を分けて書いておきます。先ほどのガイドラインは、人格や尊厳を否定する発言を「言葉の暴力」として明確に位置づけています。
つまり分けるべきは音量ではありません。人格を否定したり、威圧して従わせたりするために怒鳴ることは、声を張ることとは別です。見学で聞くべきなのは、誰に何をどう伝えているかです。
罰としての正座や、不適切な負荷のトレーニングは私の道場にはありませんでした
武道では見かける光景かもしれません。罰として正座をさせる、罰として走らせるといったことです。
私が通っていた道場には、ありませんでした。
ここは知っておいた方がいいと思います。日本スポーツ協会のガイドラインでは、次の行為が「不適切な指導」として名指しで挙げられています。
- 罰として正座をさせる
- 不適切な負荷を設定したトレーニングをさせる
- ケガをしているにも関わらずプレーを強要する
- 脱衣や断髪の強要
- 正当な理由なくプレーさせない
走り込み自体が悪いわけではありません。体力強化を目的に、本人の状態に合わせて段階的に行う走り込みと、罰として過大な負荷を課すことは別です。私が走り込みをやっていたのは、罰としてではありません。
「昔からある指導」であることと、今の指針で適切とされていることは別です。見学でこうした場面を見たら、そこは判断材料になります。
私がいた団体では、帯の色で指導上の立場が分かりました
資格の話です。私がいた団体では、こうなっていました。
| 黒帯 | 指導員 |
| 茶帯 | 準指導員 |
つまり帯の色を見れば、その人がどの立場かはある程度分かります。
ただしこれは私がいた団体の話です。資格制度は団体によって違いますし、日本スポーツ協会の公認スポーツ指導者資格のような、競技団体をまたぐ資格もあります。気になる場合は、直接聞いてかまいません。
帯の色と昇級の仕組みは空手の昇級審査と帯の色にまとめています。
保護者との距離感:話しかけやすいが、一線は引く
子供を預ける場合、ここも気になると思います。
私が見ていた道場では、こうでした。
話しかけやすい。ただし一線は引いている。
そして、その理由がはっきりしていました。
あくまで保護者とではなく、生徒と向き合っているからです。
ここは判断を間違えやすいところだと思います。「話しやすくて感じがいい」を良い指導者の基準にすると、ずれます。親と仲が良いことと、子供をきちんと見ていることは別です。
逆に言えば、質問には答えてくれるが、必要以上に距離は詰めてこないという状態が、実は健全なのだと思います。先ほどのガイドラインにも、「プレーヤーとの信頼関係を築きつつも、過度の主従関係や親密な関係はさけ、適切な距離を保つ」という記述があります。
1回の見学で分かること、分からないこと
ここは分けて考えた方がいいと思います。
| 内容 | |
|---|---|
| 1回でも判断材料になる | 指導者(言葉遣い・佇まい・指導の仕方) |
| 1回では分からない | 練習内容(日によって変わる) |

指導者については、1時間の見学でも、言葉遣いや態度について重要な判断材料を得られます。
ただし、限定を付けておきます。見学者がいることを意識して、普段と違う振る舞いになる可能性はあります。1時間ですべてを見抜けるとは限りません。
そのうえで、判断の使い分けはこうなります。
- 人格否定や安全無視を一度でも見た → その1回で候補から外してかまいません
- 軽い違和感が残った → 別日や別クラスも確認する
一方、練習内容は日によって変わります。組手だけの日、型だけの日もあるので、1回の見学で稽古の全体像はつかめません。
つまり「もう1回見に行くべきか」を判断する基準は、こうなります。
- 指導者が気になった → もう1回見ても印象は変わらない可能性が高い
- 稽古の中身が分からなかった → 別の曜日にもう1回見る意味がある
指導者が変われば、雰囲気は変わります
最後に、見落とされやすい点を書いておきます。
指導者が変わって、道場の雰囲気が変わったことがあります。
これは道場を選ぶときの前提を変えます。今いる指導者を見て決めたとしても、その人がずっといるとは限りません。転勤、独立、引退、体調。理由はさまざまです。
だから「この先生だから決めた」だけで選ぶと、変わったときに拠り所がなくなります。複数の指導者がいるか、その人たちの言葉遣いはどうか、というところまで見ておくと安全だと思います。
不適切な指導を見聞きしたときの相談先
書いておきます。
日本スポーツ協会(JSPO)は、スポーツにおける暴力行為等相談窓口を設置しています。子ども用の窓口も別に用意されています。
| WEB相談フォーム | 24時間随時 |
| 電話 | 03-6910-5827(毎週火・木 13:00〜17:00、年末年始・祝日を除く) |
取扱範囲は確認しておいてください。
- 対象となる行為者はJSPO公認スポーツ指導者資格認定者、スポーツ少年団登録者
- 対象となる行為は暴力、暴言、各種ハラスメント、差別的言動、不適切指導等
- 原則として、最終行為時から5年を経過したものは取り扱われません
- 大人(指導者と保護者等)間のトラブルは、原則として取り扱われません
- 被害を受けた本人だけでなく、家族・知人・チームメイト等も利用できます
- 匿名でも相談は可能(処分手続きに進む場合は実名が必要)
取扱範囲外の場合は別の窓口を紹介されることがあるとされています。
子供の体罰・暴言については子供が試合で負けたとき、親は何と言えばいいかに、児童相談所の窓口もまとめています。
まとめ
- 見るのは言葉遣い・佇まい・指導の仕方。技術の高さや競技実績ではない
- 言葉遣いで一番出るのは「お前」と言わないこと、語尾
- 公的指針は、励ますためであっても一般社会で受け入れられる言葉遣いを求めている
- 良い指導者は生徒をよく見ている。そして根性論だけで終わらず、目的を説明して本人に合わせる指導をする
- 怒鳴る指導は、基本的によくないと思う。私は全否定はしないが、私の道場では怒鳴らずに15年成立していた
- 罰としての正座や、過大な負荷を課す指導は私の道場にはなかった。公的指針が挙げているのは「罰として正座」と「不適切な負荷」。走り込み自体ではなく、目的と負荷で区別する
- 私がいた団体では黒帯が指導員、茶帯が準指導員。ただし団体による
- 保護者とは話しかけやすいが一線は引く。理由は保護者ではなく生徒と向き合っているから
- 指導者は1回の見学でも、重要な判断材料を得られる。ただし1回ですべてを見抜けるとは限らない。練習内容は1回では分からない
- 指導者が変われば雰囲気は変わる。1人だけを見て決めない
本記事は運営者の実体験に加え、公開されている公的団体の指針を参照しています。指導者の資格制度や道場の運用は団体・道場によって異なります。必ず見学・体験でご確認ください。
道場選びの項目は空手道場の選び方、稽古の中身は空手の稽古では何をするのか、子供に習わせるか迷っている場合は子供に空手を習わせるべき?にまとめています。
